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​オリンポス山について

オリンポス山とは火星にある火山のひとつです。

 

我々の住む太陽系には8つの惑星が存在していますが、地球のひとつ外側を回っている惑星が火星です。火星の平均半径は3396 km(Smith et al., 2001)と、地球(平均半径:約6370 km)と比べれば小さいですが、オリンポス山の標高は約21,000 m、麓からの起伏は約22,000 m(Smith et al., 2001; Mouginis-Mark and Kallianpur, 2002; Plescia, 2004)と(図1)、地球の山々とは比べ物にならないほどの高さを誇っています(注1)。この高さは火星だけでなく、太陽系の中でも際立っており、オリンポス山は現在、ヴェスタという小惑星のクレーターにある高さ約22 kmのセントラルピーク(中央丘)と共に、太陽系の最高峰となっています(注2)。

オリンポス山

図1:​ オリンポス山の標高.赤い三角点が山頂で,麓から約22kmの高さにある.

等高線の間隔は200m.JMARSのMOLAデータを用いて作成. カラーバーはGoogle Marsより引用.

オリンポス山は火星の北緯17.3度,東経226.3度に位置しており(Smith et al., 2001)、南東にはタルシス台地という標高の高い台地が広がっています(図2)。タルシス台地にはタルシス三山と呼ばれる、アルシア山(標高約18,000 m)、アスクレウス山(標高約18,000 m)、パヴォニス山(標高約14,000 m)の3つの火山があり、それぞれが1万メートル越えの標高を誇っています(図2)。火星にはプレートテクトニクスがないため(注3)長期にわたって同じ場所で噴火が繰り返されたこと、また重力が小さいことも相まって、このような高い火山ができたと考えられています(Werner, 2009)。

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(a)

オリンポス山とその周辺

(b)

図2:​ (a):火星の赤色立体地図(アジア航測株式会社 千葉達朗氏提供).斜度を赤の彩度で,尾根谷度を明度で示している.赤色立体地図の詳しい見方はアジア航測株式会社のサイト(https://www.rrim.jp)を参照.(b):オリンポス山の周辺とその標高.オリンポス山はタルシス台地の北西に位置し,南東にはタルシス三山がある.JMARSのMOLAデータを用いて作成. カラーバーはGoogle Marsより引用.

オリンポス山は地形の特徴から、楯状火山という火山に分類されており、玄武岩質の比較的粘性の低い溶岩によって形成されたと考えられています。楯状火山は楯のようななだらかで幅の広い形状が特徴で、地球ではハワイ諸島の火山が代表的な楯状火山として知られています。オリンポス山も麓の断崖(Basal Scarp)を除けば、傾斜は5度程度(Plescia, 2004)となだらかです(詳しくは地形のページを参照)。ただし、山の幅は約600 kmと広大で(図3)、麓から頂上まで行くには2万メートル以上の高低差に加え、300 km以上の距離を移動する必要があります。また、火星には0.006気圧程度の二酸化炭素が主成分の大気しかなく、気温も、場所や時間によって異なりますが、昼でも-50℃から-20℃程度(Wolkenberg et al., 2010)、夜になると麓で-70℃、頂上付近では-100℃にもなるようです。Spiga et al. (2011)によると、頂上付近の夜の地表温度が-120℃程度と観測され、気温は地表温度より20℃ほど高くなると見積もられています。そのため、オリンポス山に登る際には、しっかりと準備をしておく必要があります。

富士山とオリンポス山のスケール比較

図3:​ やまつみ工房(http://www.yamatumi.jp)の模型による,富士山とオリンポス山の大きさの比較.

模型の組み立てと撮影は筆者.

(注1)

標高は基準面からの高さ、起伏は麓からの高さを表しています。地球の基準面は海面(ジオイド)ですが、火星には海がないため、Smith et al. (2001)では、火星の赤道における平均半径での重力(引力+遠心力)ポテンシャルと等しい面を基準としています。オリンポス山の麓は標高マイナス378m(Smith et al., 2001)と基準面より低いので、起伏の方が大きくなります。また古い観測データでは、標高や起伏が24-26kmとなっていることもあります(例えばHodges and Moore, 1994)。

 

(注2)

ベスタのセントラルピークの高さには不定性があります。また、どこを基準とするかによっても標高の値は変わります。最低地点からの高さを考えると、ベスタのセントラルピークはオリンポス山よりも高くなる可能性があります。

(注3)

火星が形成されて間もない段階ではプレートテクトニクスが起きていた可能性があるという指摘もあります(例えば Sleep, 1994)。

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