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オリンポス山の形成過程

​オリンポス山はどのような過程を経て、太陽系有数の高い山になったのでしょうか。地表の年代などから、どうやらオリンポス山は30億年以上の長い時間をかけて現在の姿になったようです。しかしながら、誕生から現在にいたるまでの火山の詳しい形成過程については、依然として多くのことが分かっていません。ここではいくつかの研究を参考にしながら、現時点で考えられているオリンポス山の形成過程を考えてみます。

1. 山の体積

Isherwood et al. (2013)がオリンポス山の北側の溶岩流を調べたところ、現在の傾斜の方向から大きくずれた方向に流れている溶岩流が見つかりました。Isherwood et al. (2013)はこの溶岩流が流れた方向は、オリンポス山によって地盤が沈む前の傾斜の向きを表していると考え、リソスフェアの厚さとオリンポス山の体積を変化させてひずみの量を計算したところ、リソスフェアの厚さが70-80 kmで、オリンポス山の体積が現在の29-51%以下の場合、溶岩流がオリンポス山によるひずみに影響されず、観測された方向に流れることが分かりました。また、クレーター年代学の見積もりから、注目した溶岩流の地域はおよそ36.7億年前、一番新しくできたと思われる北側のAureole Lobeは25.4億年前に形成されたという結果を得ました。北側のAureole Lobeが形成された際の、山体の大きさについてはあまりよく分かっていませんが、仮にオリンポス山の大部分が形成された後で北側の山体崩壊が起きた(McGovern et al., 2004)と仮定すると、現在のオリンポス山の体積の49-71%以上は36.7億年前から25.4億年前に形成されたことになります(Isherwood et al., 2013)。

 

また、Chadwick et al. (2015)はオリンポス山の南から南東の地域で、同じく溶岩流と傾斜の解析および年代の見積もりを行ったところ、現在のオリンポス山の体積の1-10%が、およそ2億1千万年以内に形成されたという結果を得ました。つまり、オリンポス山は最近になって割と激しい噴火を起こしたようです。これはカルデラの形成時期とほぼ同じです(Neukum et al., 2004, Robbins et al., 2011)。

2. 地形との関連

オリンポス山の成長過程

​以上の研究結果に、地形の形成メカニズム(詳しくは地形のページを参照)を含めてオリンポス山の成長過程をまとめたものが図1です。ただし、これはあくまでも1つの考え方に過ぎず、今後の研究の進展によって変わっていく可能性が大いにあります。

 

(a): オリンポス山は粘土層を含む地表に玄武岩質のマグマの噴火が起きたことで形成が始まったと考えられます。37億年ほど前の段階では、山は現在の体積の29-51%未満しかありませんでした。

 

(b): 噴火によって次第に高さを増していった山は、その重みで沈み込みと横滑りを起こし始めました。このとき、海との接触もしくは山体の動きによって縁の傾斜が急になっていきます。また、詳しい時期は分かりませんが、山体が高くなると内部にはマグマ溜まりができた可能性があります。

 

(c): 急傾斜が形成されたことと、粘土層が摩擦を減少させたことで、山の縁が山体崩壊を起こし、Basal ScarpとAureole Lobeを複数の方向(特に北と西側)に作っていきました。そしておよそ25億年前、オリンポス山の体積は現在と近くなり、最後のAureole Lobeを北側に作ったと考えられています。

 

(d): およそ2億年前になると、そのマグマ溜まりの圧力が減少し、何回かに分けてカルデラが形成されていきました。この時点でマグマ溜まりの上部は山頂から深さ約16 kmの場所にあり、厚さは20 km程度であったと見積もられています。カルデラ形成のメカニズムとしては、ハワイの火山との関連に加え、最近では横方向へのマグマの移動という説も提案されています。

 

(e): そしてオリンポス山は、これ以降の噴火で残りの1-10%の山体ができたと考えられています。噴火の詳しい状況は分かっていませんが、山腹から噴火があった可能性があります。また、数千万年前になると、自転軸の影響で、西側の麓に大気中の水分が凍ったことによる氷が発生し、それが周りの岩やダストを巻き込んで岩石氷河のような地形をつくりました。氷河は現在は活動してませんが、東側では現在でも地質学的な活動が起きている可能性があります。

図1:​ オリンポス山の形成過程.

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